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2023.03.16メディア

聖教新聞の3月12日号に掲載された、岩井俊憲のインタビュー記事について
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聖教新聞の3月12日号に掲載された、岩井俊憲のインタビュー記事について
聖教新聞の312日号 の〈ライフスタイル〉欄に掲載された岩井俊憲のインタビュー記事について一部の媒体限定で聖教新聞社編集総局報道局文化部の方から公開許諾を受けました。

 以下はその転載です。

成人した娘との関係に悩む母親へ

ないものねだりより“あるもの生かし”を

有限会社ヒューマン・ギルド 代表取締役 岩井俊憲さん



有限会社ヒューマン・ギルド 代表取締役 岩井俊憲

  一時期はやった「親ガチャ」も、「毒親」も、子ども目線による言葉です。今回登場いただくのは「娘との接し方」に悩む母親のための本『娘が理解できません 大人になった娘のために、母親は何ができるか』(小学館)の著者で、カウンセラーの岩井俊憲さん。
 この本に込めた思いを聞きました。


「毒親」という言葉に縛られないで

 

■なぜ“母と娘”の本なのでしょうか。

 

 私は40年間で延べ20万人以上にアドラー心理学による講演や研修を、1万人近くに不登校や親子関係のカウンセリングなどを行ってきました。そのかなりの部分が“母娘関係”の悩みでした。特に、母親の影響を一番受けやすいのが長女です。

 

 母親は「あんなに一生懸命尽くしてきたのに、娘の態度が冷たい。なぜ? 私は毒親だったの?」と悩む。娘側は自分が子育てをするようになり「私は毒親に育てられたのでは」と思うことが多く、「私も子どもに同じことをしているかも」と、悩んだりする。

 

 世間に“毒親”という言葉がまん延したことで、母娘とも「自分もそうかも」とレッテルを貼りがちです。発達障害やHSP(とても繊細な人)なども言葉がはやると「私も」「あの子も」となってしまう。人は一度そう思うと、意識が強化されていきます。

 

 私はそういうレッテル貼りや、決め付けが嫌いです。一人一人違うし、一家族一家族違います。毒親という言葉に縛られることに起因する世代間継承を回避したい、また原因追究よりも「今からできること」をサポートしたいという思いから、この本を書きました。

 

■母娘関係のカウンセリングで多い母親のタイプは?

 

 親には大きく分けて①専制主義型②民主主義型③放任主義型の三つのタイプがあるといわれています。

 

 やはり専制主義型の母親は独善的で、過保護、過干渉。子どもを支配し依存します。例えば、進学先を勝手に決めたり、付き合う友人関係に口を出したり、子どもの課題に安易に踏み込む。パワハラと同じです。そこで育った娘は、成人してから違和感に気付きます。

 

 今は離れたところに住んでいても、自分の行動に対する親のささやきが聞こえてしまう。脅迫的に。親による呪縛ですね。

 

自己肯定感より、自己受容が大切

 

■娘と関係がこじれた母親が、最初にすべきことは?

 

 娘に執着せず“自分”を見つめることです。完璧な人間がいないように、完璧な母親もいません。まずは自分を受け入れること、自己受容です。

 

 これは自己肯定感とは異なります。自己肯定は「肯定しよう、しよう」とするのが一種のわなになり、肯定できない自分に直面するリスクがあります。例えば、「幸福を求めるわな」もそうです。「幸せになりたい、なりたい。まだ幸福じゃない」という人は不幸を感じ、「おかげさまで」と思える人は幸福を呼ぶ。

 

 それと同じように「自分なんか肯定できない。まだ足りない」というあがきで、ますます肯定できなくなる。そうではなく、問題のある自分を受け入れるのが、自己受容。必要なのは「不完全である自分を受け入れる勇気」です。

 

■確かに、理想とは違う自分を認めるには「勇気」が必要です。

 

 より成長したいというモチベーションで生きる人間にとって、それができていない自分を受け入れることを、アドラー心理学では「勇気の中でも非常に大きな勇気」だと捉えています。

 

 少し次元は違いますが、俳優のオードリー・ヘプバーンは、年齢を重ねても「一つ一つのシワも私」と、写真を修正しませんでした。シワも自分の魅力だと。これは自己受容ですね。

 

 そのままの自分を丸ごと受け入れる。自己肯定感を無理に求めるのは、ないものねだりにつながりかねません。私の好きな言葉は「ないものねだりより、あるもの生かし」。あるものを生かそうじゃないかと。

■自己受容が、関係改善のカギですね。

 

 いわゆる毒親になるのは“完璧幻想”がある人が多いと思います。例えば「自分はこうだから、せめて娘は」と。自分が満たされなかった夢を娘に託して、非常に強い強制圧力になる。それに耐えられなくなる娘たちが多いですね。それでいて、親の希望通り成果を出した娘に、嫉妬してしまう母親もいたり。人の心は複雑です。

 

■母親が自分を見つめられたら、次にやるべきことは?

 

 気付けたなら、私は子どもへの謝罪だと思います。子育ては失敗の連続。「しくじっちゃったかも」と受け止め、謝って、直していけばいいだけなのですが、自分の非を認める親は極めて少ないですね。「毒親なんかじゃない。むしろ教育熱心だったわ」と、自負心を持っている場合が多い。すると子どもも「この人には分からない」となってしまいます。

 

 子どもの側にも許しと感謝が生まれると、双方歩み寄り、関係改善へ進むと思います。

 

 ただ、和解や折り合いがつくことだけが幸せではありません。子どもは子どもで自分の道を歩んでいます。執着するより距離を置いた方がいい場合もあります。

 

 アドラー心理学では「人生の主人公は自分自身」と考えます。母も娘も、人生をどう生きるかは自分次第。「私が今からできること」に目を向け、未来をつくっていきましょう。

 

《母娘関係を考えるヒントに 岩井さんからワンポイントアドバイス》

  
●母娘の歩み寄りの一歩は、親が自分自身と向き合い変化すること。子どもは、親のささいな変化もキャッチします。
 
●成人した娘が気になって仕方ない人は、子どもに“依存”しているかも。他に夢中になれるものを見つけましょう。
 
●「あんなに○○してあげたのに」という気持ちは、対人関係全般で起こり得ること。子どもの記憶には、それほど残らないので、感謝されないものと心得ておきましょう。娘が親になった時、感謝されるかもしれません。
 
●和解のため謝りたいとしても、娘側の怒りが強い時は、頼りになる第三者に入ってもらうか、もう少し時間をかけた方がいいかもしれません。子どもの気持ちに合わせましょう。
 
●アドラーは「人は記憶をつくる」と言っています。過去の出来事が“思い込みの物語”になっている可能性も。昔話をきっかけにお互いの認識のズレが分かり、母娘が和解することもあります。
 
●「最近、大切なことを報告してもらえない」と思うなら、「便りがないのがよい知らせ」と考えましょう。自立した娘から頻繁に報告がないのは自然なこと。親のリーダーシップは卒業です。

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