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「放てば満てり」

2010/09/03

 月刊『致知』(致知出版社)2010年9月号の「致知随想」欄に岩井俊憲の「放てば満てり」の文章が掲載されました。
 岩井がヒューマン・ギルドを設立する前の、いわば「ヒューマン・ギルドの原点」とも言うべき内容が書かれています。


「放てば満てり」 
岩井俊憲(いわい・としのり)

「岩井さん、禅には『放てば手に満てり』という言葉があります。あなたはいろいろなものを失い、いまは苦しい時期でしょうが、必ず道はひらけますよ」

 いまから二十七年前、失意のどん底にあった三十五歳の私を、仏教の師匠はこのような言葉で勇気づけてくれました。
 事の発端は、それまで勤めていた外資系企業が経営不振に陥ったことでした。会社を建て直すには人員整理以外に手段がなく、総合企画室課長として再建プラン策定の中心にいた私もまた、自らのプランに基づき会社を去る決意をしたのです。
リストラと同時期に妻と離縁、幼い子供たちとも別れて暮らすことになりました。そして離婚協議書に基づき、埼玉県の自宅は妻に渡し、退職金で住宅ローンを返済しました。慰謝料、養育費を支払うと、手元に残ったのは十万円の普通預金のみでした。
 仕事と家族と財産。私は人生に欠かせないこの三つをほぼ同時に失い、二間のマンションで文字どおりゼロから再スタートを切ることになったのです。
 人間はどん底まで落ち込むと、順調な時は考えてもいなかった思いが湧いてきます。
「沈むところまで沈めば、後は浮かび上がるしかない。中途半端に失うから悔いが残るのだ」
 自らにそう語りかけては、勇気を奮い起こしました。
 過去への未練を断ち切るように坐禅や滝行、観音霊場巡りに打ち込み、仏教に傾倒するようになったのも、そこに一縷の希望を見出そうとしたからだと思います。「放てば手に満てり」の言葉を呪文のように心の中で反芻したのもこの頃でした。
 幸い半年間は月々二十万円程度の失業保険が得られます。この間に新しい道を歩き出そうと思いました。とはいっても、私はこれまでの延長線上の生き方をする気にはなれませんでした。 複数の企業からいただいたオファーはすべて断り、私は仏教の師匠が主宰する不登校や非行少年のための小さな私塾をボランティアで手伝うという、まったく異質の世界に飛び込みました。
 後に私は外資時代に培ったノウハウを生かし、塾の経営を安定させるのですが、当時はたとえ無報酬でも教育という新しい世界に生きることに、大きな生きがいを見出していたのです。
 ある時、岩手県の十七歳の少年をこの塾で預かることになりました。手狭な塾では寝泊まりができません。そこで私のマンションに呼び寄せて、一緒に暮らすことにしました。
 この少年は二年で高校を中退、家に籠もりっきりで家庭内暴力を繰り返していました。悩み抜いた父親が「生活費は送るから、何とか立ち直らせてほしい」と頼み込んできたのです。
 問題のある子を預かるなど私にはもちろん未経験です。最初はとにかく一緒に食事をし、話に耳を傾けるのが精一杯でした。 彼は常に不安に怯えていました。夜中に私を揺り起こし心の内を吐露することもしばしばでした。そういう中で彼もひどい虐待を受けていた事実を知り、ともに涙する夜もありました。
 私たちはどん底から立ち上がろうとする者同士でした。起居を共にし、支え合って生きていく中で、いつしか実の親子以上の深い信頼関係が培われていくのを感じました。短期間お預かりする約束だったのが、進学したいという彼の希望を受けて私も受験勉強を手伝い、夜間高校、そして大学入学までの三年間面倒を見ることになったのです。
 いま振り返ると、私は実の子を手放しましたが、神様は別の形で私の成長に必要な子を授けてくださったように思います。これもまた「放てば手に満てり」という不思議な計らいだったのかもしれません。
 少年のお世話をするようになる少し前、私の人生を変える一つの出来事がありました。アドラー心理学との出合いでした。
 アルフレッド・アドラーはユング、フロイトと並ぶ心理学三大巨頭の一人です。その学問は一言で「健康な人のための心理学」といえると思います。人の過去は一切問わず、自分も、そして周囲の人々も勇気づけながら元気にしていく心の姿勢を教えたものです。
 私もまたアドラーに大きな勇気をもらい、また問題のある子供たちに接し、前向きな生き方を教える上でどれだけ大切な指針を得たか図り知れません。いつしか新たな人生の道筋をそこに見出すようになっていました。
 約二年間、私塾の成長を見届けた後、私はアドラー心理学を日本に定着させる拠点となる会社を設立しました。そして現在まで二十五年間一貫して心理学の普及に努める一方で、カウンセリングや企業研修などの仕事に命を注いできました。
 かつての苦い体験も、この仕事のために天から与えられたのだと、いまでは心から納得できます。私がどん底を味わっていなかったら、人々の痛みや悩みに心から共感できないままだったでしょう。そう考えると、人生に無駄なことは何一つないのかもしれません。
 私の経験を通して、また日々、多くの悩みを抱える方に接する中で感じるのは、人は周囲への貢献なしに生きられないということです。窮地に陥ったとしても、笑顔を見せるだけでいい、「ありがとう」と感謝の言葉を口にするだけでいい。過去を振り返らずに、いま自分ができる小さな貢献を積み重ねていくことで、目の前の壁を乗りこえる勇気が生まれてくる。そのことを私は最後にお伝えしたいと思います。

 岩井俊憲(いわい・としのり=ヒューマン・ギルド社長)


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